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劇的レースにも素直に喜べない理由。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

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posted2007/07/12 00:00

 全日本F3選手権シリーズ第8戦は、スタート時点の路面がフルウェットだったにもかかわらずレース中盤にドライ路面へ変わるという、珍しいコンディションで行われた。その結果、最初からドライタイヤに賭け、一時は7位まで順位を落とした塚越広大が逆転優勝を飾るという劇的な展開となった。岡山国際サーキットにいた観客は、存分にF3レースの醍醐味を味わったに違いない。

 もっとも、F3を若手選手育成カテゴリーとして眺め直したとき、今季の全日本F3は必ずしも望ましい状況にあるとは思えない。全参加者数は12名。格闘の中で技量を磨くというF3本来の目的を考えると、寂しい限りだ。

 さらに問題はある。今年は車両性能差が目立つのだ。F3は若いドライバーが車両性能に頼ることなく自らの腕を磨くため、車両規則はエンジンを含む道具の性能差を最小限に止めるよう定められている。しかしレーシングテクノロジーの進化は往々にして規則の一枚上を行く。

 F3には育成プログラムを通して自動車メーカーが関わっている以上、技術競争が起きるのは仕方がない。しかし若手選手を育成するためのF3というカテゴリーの意味を考えたとき、そこで生じる性能差はカテゴリーの首を絞めかねない。道具の性能差が大きくなれば選手の技量は二の次となり、人材育成という意義が薄らぐ。さらに技術競争がコスト高騰を招き、メーカー自身を疲労させるばかりか、参加者を減少させてしまうからだ。

 すでに、育成カテゴリーはエンジンメーカーにこだわらずワンメイク化していくべきではないのかという声もあり、実際フォーミュラルノーがF3の代替カテゴリーのひとつとして受け入れられつつある。それはそれでひとつの道だとは思うが、ルノー以外の自動車メーカーが人材育成という仕事から腰を引いてしまうのではないかという不安が残る。

 差が付かない程度に空気を読みながら、適度な競争をしつつ多くのメーカーがF3を支え若い選手を育てろというのは、実にムシのいい外野のおねだりではあるが、長年にわたって世界共通規格として運営され幾多の選手を輩出してきたカテゴリーを大事にしたいもんだなあ、と近年まれに見る大逆転劇を堪能しながら思った次第。

モータースポーツの前後のコラム

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