濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
川尻達也はこうやって潰された……。
『STRIKEFORCE』絶対王者の貫禄。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2011/04/27 10:30
ギルバート・メレンデス(写真左)は過去、2006年大晦日のPRIDEで川尻達也と対戦。その時は2R、判定勝ちを収めている
勝利によって紡がれた“シーザー軍団の物語”。
実はこの試合は、メレンデスにとっても特別なものだった。STRIKEFORCEは、今大会の約1カ月前にUFCの母体であるズッファ社に買収されている。STRIKEFORCEはUFCにとってライバル団体ではなく、傘下団体になった。そういう状況だからこそ、メレンデスはSTRIKEFORCE王者としての強さと意地を見せたかったはずだ。
加えてこの日のメインイベントでは、シーザー・グレイシー柔術の同門ニック・ディアスがウェルター級タイトルの防衛戦を行なっている(1ラウンドTKOでポール・デイリーに勝利)。4月30日の『UFC129』では、やはり同門のジェイク・シールズがジョルジュ・サンピエールの持つUFCウェルター級王座に挑戦する。メレンデスはディアスにつなげ、ディアスはシールズにつなげる。彼らには彼らのドラマがあったのだ。
試合後、笑顔でシールズと抱き合うメレンデスの姿を見た時、彼が単なる“日本人の敵”ではなかったことに気づかされた。メレンデスの圧倒的な実力と、そこに内包された“シーザー軍団の物語”は太平洋を隔ててPPV映像を見る者にとっても魅力的だ。日本人としての悔しさはもちろんある。だが、それを上回ったのは格闘技を愛する者としての高揚感だった。