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“公立校の星”加古川北が大躍進!
「勇気」を旗印にセンバツ準々決勝へ。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/03/30 12:45
理想の投手像を尋ねられると「究極の打撃投手です」と語る加古川北のエース井上真伊人。100キロ台のスローカーブやカットボール、内角へ鋭くきまる直球などを武器とする。普段からブルペン調整をせずに、打撃投手として練習し、類まれな投球術を身に付けた
「引き当てたな」
3月15日の抽選会場、大会の組み合わせが決まると、加古川北・福村順一監督は笑みを浮かべた。
初めて挑むセンバツの初戦の相手が昨秋北信越大会覇者の金沢だというのに、だ。
MAX152キロのストレートを武器とする釜田佳直を擁する金沢は優勝候補の一つ。夏は'08年に出場しているとはいえ、春初出場の加古川北にとっては手ごわい相手である。また、加古川北と同じブロックには、横浜、明徳義塾、日大三といった、各地区の優勝校や甲子園常連校がそろっている。
それでも、福村監督に戸惑いはなかった。むしろ、歓迎している風でもある。
なぜなら、加古川北は強豪校との対戦にこそ、活路を見出してきたチームだからである。
昨秋には報徳学園と大阪桐蔭を続けて破った加古川北。
昨秋の兵庫県大会では報徳学園、続いて行われた近畿大会では大阪桐蔭を撃破した。強豪校に臆することなく戦い、次々と金星を挙げてきた。
大阪桐蔭戦では、エースの井上真伊人が試合開始の第1球にスローカーブという勇気ある投球を見せて観衆を沸かせると、そのままの勢いで強豪校をアッサリと飲み込んでしまっていた。
強豪校と当たっても、臆することはない。
むしろ、戦い慣れているだけに、やりやすいといったところだろうか。福村監督は今大会、大物食いを続けてのチームの躍進を確信していたのであろう。
それは、指揮官だけでなく選手も同じである。今大会のくじを引いた都倉健司主将は声を弾ませて言ったものである。
「近畿大会で大阪桐蔭との対戦が決まった時は、世間をあっと驚かせようっていっていた。今度は全国を驚かせたい」