「中2でしたが、すでに練習試合に出られるレベルでしたから。確か相手は神奈川の桐蔭学園のCチーム。そしたら、承信は10分ぐらいの間に3トライも取ってくるわけです（笑）」

じつは花園優勝校から特待生の話もあった

　李承信の大阪朝高の同級生・徐和真（ソ・ファジン）さんは、李承信が花園の優勝経験校から特待生など好待遇の話をもらっていたことを知っていたので、「朝高に来る」と聞いたときは驚いたという。

「（特待生という話があれば）普通はそっちに行きますよね。でも、お兄ちゃんがいたこともあって、朝高に来ることになって。正直びっくりしましたが、一緒にラグビーができると思うとうれしかったですね」

大阪朝鮮高、李承信たちが3年の時のチーム（2018年）

　大阪桐蔭、東海大仰星、常翔学園といった大阪府の強豪校が、2010年以降花園で全国優勝している。そんな周りの学校は、グラウンドは人工芝で校舎は立派。一方で、大阪朝鮮高は決して広いとは言えない土のグラウンド、しかもサッカー部と共用である。承信を指導していた権さんも施設面で決して恵まれていないことを実感していたという。

1年間で休みは10日…練習は「しんどかった」

　限られた人数、厳しい環境で花園を目指し、熾烈な大阪府予選に挑んできた大阪朝鮮高の練習は“しんどい”ことでも知られていた。徐和真は「（他校の状況は知らないが）しんどかったのは間違いないです」と笑う。

「入学前には（練習で）吐く人がいるみたいな噂をよく聞きましたね。実際に入ってみると、ほぼ休みがなかった。1年365日のうち休みは10日あるかないか。土日も午前と午後にそれぞれ3時間くらいは練習していて、終わったらもうヘトヘトになって帰るだけ。だからプライベートはほぼなくて、1年中一緒だったけど承信と休日に遊んだ記憶はないし、ラグビー以外の思い出はまったくないです」

大阪朝鮮高時代の徐和真さん（左から2番目）と李承信（右）　

「2度とこんなことは嫌だ」

　前監督の権さんによれば、承信が2年の冬休みにはこんなことがあったという。

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