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「律、いつゴールを決めんねん?」堂安律が長友佑都、原口元気“先輩”の叱咤にW杯ドイツ戦で応えたワケ「ピンとこない人も多いと思いますけど」

posted2023/09/09 06:00

 
「律、いつゴールを決めんねん?」堂安律が長友佑都、原口元気“先輩”の叱咤にW杯ドイツ戦で応えたワケ「ピンとこない人も多いと思いますけど」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA

カタールW杯ドイツ戦で一躍、救世主となった堂安律

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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Kiichi Matsumoto/JMPA

「俺が決めるという気持ちで入った」と後半から途中出場。75分に日本を甦らせる同点ゴールを奪った男は、切り札としてこれ以上ない働きを見事にやってのけた。この日のために積み重ねてきた強い思いとともに。

 カタールW杯ドイツ戦ジャイアントキリングの立役者の1人、堂安律。現森保ジャパンのナンバー10が語った会心の一撃、そして当時つけていた“背番号への思い”とは。Number臨時増刊号(2022年12月6日発売)の掲載『[起死回生の同点弾]堂安律「“背番号8”に魂込めて」』を、ドイツとの再戦に向けて――特別に全文掲載します。

 ヒーローになれるのは、ヒーローになるための準備をしてきた者だけだ。

「この5~6日、脳のなかでゴールを決めるイメージをしすぎて、眠れないくらいでしたから。でも、夢見た通りの結果ですね」

 ヒーローになるための努力なら誰にも負けない。堂安律はそう確信している。

W杯で活躍できる奴は、今まで努力してきた人間

 何しろ、大会前に筆者にむかって、こう話していたくらいなのだから。

「W杯は4年に1回の大イベントですけど、そこで活躍できるヤツは、今まで努力してきた人間だと思っています」

 果たして、その努力はドイツ戦での起死回生の同点ゴールで実を結んだ。

 彼の努力を挙げるには、ページがいくらあっても足りない。ここではハートで闘う堂安らしいエピソードに目を向けていく。

 今年の夏、昨シーズンのドイツ最優秀監督に選ばれたクリスティアン・シュトライヒが率いるフライブルクへ移籍した。数多のオファーからこのクラブを選んだのは、交渉の過程で、自身の課題を指摘されたからだ。選手を獲得したいと考える立場の人は、たいてい、聞こえの良い言葉ばかりを並べる。だが、フライブルクとシュトライヒ監督は違った。堂安が克服すべきポイントをあえて挙げ、こう訴えかけてきたのだ。

「オマエをさらに成長させたいのだ!」

 フライブルクでは、チーム練習後、選手各自が成長するために1時間を費やすというルールが課されている。グラウンドでテクニックを磨いてもいいし、ジムで身体を鍛えてもいい。育成部門で名を上げた名将シュトライヒがいるからこその取り組みだ。

9割方、イメージを作るためのトレーニングでした

 9月の日本代表のエクアドル戦以降、堂安がその時間に取り組んできたのが、シュートを決めきるメンタルを鍛える練習だった。あの試合では1度のビッグチャンスを活かせず、決定力のなさを目の当たりにし、引き分けという結果にも責任を感じていた。

「あれは僕のせいです。僕が決めればよかったのに」

【次ページ】 同点弾を放つ直前、特別な体験とは

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