追い詰められた大阪桐蔭「球場全体から手を叩く音が…」“令和の番狂わせ”下関国際の4番バッターが証言する「逆転直前の異様な空気」

　鮮烈な救援シーンだった。

　下関国際は6回裏、大阪桐蔭に4－3と勝ち越され、なおも2アウト満塁。ここで背番号6の仲井慎がショートのポジションからいったん三塁ベンチの方へ駆けていく。ファウルラインのあたりで、控え選手から投手用のグラブを受け取り、そのままマウンドへ。いつもの光景だった。

昨夏の下関国際、幾度となく見られた左腕・古賀康誠から右腕・仲井慎への継投　©Hideki Sugiyama

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西谷が見た“下関国際・仲井”

　下関国際が、いよいよ最後のカードを切った。

　仲井は、まるでいきり立っているように見えた。打席には、4番・丸山一喜。仲井は顎を引き、帽子のひさし越しに捕手のサインを覗き込む。そして、細い体と腕をムチのようにしならせ、ボールを投げ込んだ。

　大阪桐蔭の監督である西谷浩一の目には、やはり「ショート兼ピッチャー」だったかつての教え子の姿とダブって見えた。

「スライダーの感じでいうと、うちでいったら根尾（昂＝中日）みたいな感じがしましたよね。対戦相手もみんな振っていましたし。真っすぐは根尾の方が力があったような気がしますけど」

　仲井は140キロ台中盤のストレートと、130キロ台の高速スライダーで、丸山を瞬く間に追い込んだ。

　そして、ボールカウント1ボール2ストライクからの5球目。顔の高さのボールだった。にもかかわらず、丸山のバットは止まらない。146キロの高めのストレートは、丸山が強振したバットの遥か上を通過。捕手は慌てて中腰になり、頭上に手を伸ばしながら捕球した。

　打者の目からは、仲井の直球は最初、それだけ低く見えるのだ。そして、そこから浮き上がってくるかのような軌道を描く。

　咆哮した仲井は、グラブの中で両手を強く突き合わせる。それから、アッパーカットのようなガッツポーズを決めた。

ガッツポーズする仲井　©Hideki Sugiyama

　西谷の中で、仲井の印象を上方修正せざるをえなかった。

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