★巨人　80点

　優勝した2020年以降、原辰徳監督は最もいい仕事をした。過去2年、シーズン後半になって急速に成績を落とす現象は監督の求心力低下を物語っているが、高校生野手ナンバーワン、浅野翔吾（高松商・外野手）という逸材を阪神との競合の末に獲得したことはカリスマ性復活につながる可能性がある。

　浅野は中軸を打つ可能性については納得できるが、本人が理想の選手に挙げるホセ・アルトゥーベ（アストロズ）のような強打の1番打者のほうが魅力を感じる。夏の甲子園大会3回戦・九州国際大付戦の第1打席、内野安打のときの一塁到達が4.36秒、準々決勝の近江戦の第1打席で二塁打を放ったときの一塁通過が4.37秒と脚力を証明済み。超攻撃型の打線も将来的に可能になる。

　2位萩尾匡也（慶應大・外野手）は大学4年になって急成長した強打者だ。3年秋の明治神宮大会では1番を打ち、2回戦の東農大北海道オホーツク戦での二塁ゴロ、捕手ゴロでは一塁到達がそれぞれ4.29秒、3.96秒という俊足が目についた。だが、4年春のリーグ戦で5本塁打を放ち覚醒し、現在リーグ三冠王を独走中だ。

　ちなみに、ドラフト1、2位がともに外野手というのは巨人史上初。常勝軍団の新しい風になることを期待したい。

巨人1位・浅野翔吾（高松商業高/外野手）。父幹司さんの横で、心境を笑顔で語った　©︎JIJI PRESS

［指名一覧］
1位 浅野 翔吾　外野手　高松商業高　右右
2位 萩尾 匡也　外野手　慶應義塾大　右右
3位 田中 千晴　投手　國學院大　右右
4位 門脇 誠　内野手　創価大　右左
5位 船迫 大雅　投手　西濃運輸　右左
《育成指名》
1位 松井 颯　投手　明星大　右右
2位 田村 朋輝　投手　酒田南高　右右
3位 吉村 優聖歩　投手　明徳義塾高　左左
4位 中田 歩夢　内野手　東奥義塾高　右右
5位 相澤 白虎　内野手　桐蔭学園高　右右
6位 三塚 琉生　外野手　桐生第一高　左左
7位 大城 元　外野手　未来沖縄高　右右
8位 北村 流音　投手　桐生第一高　右右
9位 森本 哲星　投手　市立船橋高　左左

若手抜擢に期待したい岡田阪神

★阪神　75点

　開幕9連敗スタートとなったが、CS進出を達成して地力を証明した阪神。チームの補強を「右の外野手」と表明していた通り、巨人が1位指名を公表していた浅野に対して果敢に競合を挑んだ。抽選で敗れたものの、スラッガーとして評価が高い森下翔太（中央大・外野手）に切り替えた。この迷いのなさは十分評価できる。

　2、3位でも門別啓人（東海大札幌・投手）、井坪陽生（関東一・外野手）という評価の高い高校生を指名し、久々に若さと弱点補強がマッチした指名となっただろう。

　若手の抜擢に躊躇のない岡田彰布新監督への変化が今回の高校生主体の指名を呼んだかもしれない。12球団の中でも珍しく野手のレギュラーの中に高校卒が1人もいないチームなので、格差を埋めるべく将来性ある野手の育成に期待したい。まずはファームでチームナンバーワンの11本塁打、70打点を記録した井上広大（19年2位）の一軍定着からか。

阪神1位・森下翔太（中央大/外野手）。東海大相模高では1年夏より4番を務めて、3年春のセンバツに出場。大学日本代表でも4番を経験　©︎JIJI PRESS

［指名一覧］
×　浅野 翔吾　外野手　高松商業高
1位 森下 翔太　外野手　中央大　右右
2位 門別 啓人　投手　東海大札幌高　左左
3位 井坪 陽生　外野手　関東一高　右右
4位 茨木 秀俊　投手　帝京長岡高　右右
5位 戸井 零士　内野手　天理高　右右
6位 富田 蓮　投手　三菱自動車岡崎　左左
《育成指名》
1位 野口 恭佑　外野手　九州産業大　右右

【次ページ】　谷繁以来の超高校級キャッチャー