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ドラ6の叩き上げ“新井さん”がついに新監督就任! 選手も待っていた切り札は、優しさと厳しさでカープ再建を目指す

posted2022/10/12 11:04

 
ドラ6の叩き上げ“新井さん”がついに新監督就任! 選手も待っていた切り札は、優しさと厳しさでカープ再建を目指す<Number Web> photograph by KYODO

19年の引退セレモニーでファンに応える“新井さん”。ファンにも選手にも愛された存在には重い使命が託される

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 広島に、“新井さん”が帰ってくる。佐々岡真司前監督の辞任発表から5日後の10月7日、球団は新井貴浩新監督就任を発表した。

 新監督に求められるのは4年連続Bクラスからのチーム再建だけではない。チームの中に薄れつつある伝統の再興、新たなスター選手育成、そして勝てるチームづくり……。託された使命は重く、また多岐にわたる。

 球団が求めるのは、わずかな変化ではない。4年連続Bクラスという成績以上に、チーム内に感じられる閉塞感を打ち破る大きな変化だ。球団幹部は当初「新井には次世代の戦力が育ってきてから渡してあげたい」という思いを語っていた。だが、今季終了後、変革をもたらす資質を持ち合わせている適任者と判断された。

 長く優勝から遠ざかっていた2015年にチーム内で起きたような変化を期待されているのかもしれない。08年から7シーズン阪神でプレーした新井は、14年オフに黒田博樹とともに7年ぶりに古巣広島へ復帰した。

「僕の中では、いい意味でピリッとしたという印象が強い。おふたりが来られて『優勝』という言葉が出てくることで、チームに勝ちたいという気持ちが芽生えた」

 当時を知る會澤翼は、あのときチーム内に起きた変化をそう回想する。

明るく、優しく、そして厳しく

 黒田が引退した17年以降も、新井は3連覇したチームの中心にいた。

 野球観はともに3連覇した選手たちと共有している。明るく、優しく、温かい人柄ばかりが注目されるが、厳しさもある。現役時代には、チームの和を乱すような態度を取った中堅選手に対し、個別に話をして正したことがある。波風立てないよう、何も言い合わずに過ごすのではなく、ときにぶつかってでも互いを理解し合うことが真の一体感だ。近年の広島では、選手、首脳陣に欠けていた部分。3連覇したチームには、新井を中心にそれがあった。

 伸び悩む若手の鑑となるような、プロ野球人生を送ってきた。駒大からドラフト6位で広島に入団した。広島と阪神で輝かしい成績を残し、名球会入りする今では考えられないが、入団当時はまったくの無名。攻守に粗削りな新人に「プロで成功するとは思えない」と感じた関係者ばかりだったという。

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