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「12球団スカウトがホメる」外野手から、DeNAスカウトが「今年のトップクラス」と語る左投手まで…“甲子園予選”で見たい高校生ドラフト候補 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph bySankei Shimbun

posted2022/07/14 17:03

「12球団スカウトがホメる」外野手から、DeNAスカウトが「今年のトップクラス」と語る左投手まで…“甲子園予選”で見たい高校生ドラフト候補<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

京都外大西高、西村瑠伊斗外野手(3年・180cm77kg・右投左打)。「12球団のスカウトがこぞってホメる」という

 快晴の青空はすがすがしいが、たまに日射しをさえぎってくれる雲は空になく、ホッと息をつかせてくれる風も吹かず、おそらく、グラウンドの体感温度は45度ぐらいにはなっていただろう。

「やばいっす……この感じで予選が始まったら、やばいっす」

 聞こえてくる選手の独りごとも、この時期になると重い。

 常葉大菊川高・安西叶翔投手(3年・186cm88kg・右投右打)の実戦マウンドを見たのは、この春の県大会。御殿場西高との一戦(5-7)だった。試合中盤からリリーフのマウンドに上がった安西投手のストレートがうなっていた。

 ほぼ全球145キロ前後。しかし、スピードより「うなり」だ。強さなんて表現じゃ弱い……やっぱりうなるようなボールだ。

 大型の右投げサイドハンド。この体でサイドから剛球を投げ込まれては、右も左も、どっちの打者も腰が退ける。

「あの試合は、スカウトの人もたくさん見にきていて、いいとこ見せようと思って、三振獲りにいったのが失敗でした」

 確かに、三振は立て続けに奪ってみせたものの、その合間に、ポツンポツンと飛んでくる打球を、バックが間違いなく処理するというのは、実はとても難しい。守っているほうはなかなかリズムに乗れずに、まさかのミスが続いた。

「内野手は、ポン、ポン、ポンと打球が飛んでくるから、守りのリズムを作れるわけで、自分のひとりよがりのピッチングがなければ、勝てた試合でした」

 そこから、「投」の世界が一変したという。

「ストライクから入って、少ない球数で打ちとって。打ち損じをとれるように、変化球のコントロールも上げないと」

 テンポ自体が変わったという。

 それでもブルペンのボールはうなる。6月の練習試合で148キロに達した速球は、勝手にいろいろと動いて、攻略困難な剛球になった。

「でも、スプリットがいちばん強いっす……」

 来年は、自分がドラフト戦線に躍り出なければならない鈴木叶(2年・180cm76kg・右投右打)ほどの捕手でも、捕球点でミットを持っていかれている。

 いや、ひょっとしたら、ミットを流しているのかもしれない。同じ「捕手」として、気持ちはわかる。あんなえげつないボール、いちいち捕球点でミット止めにいっていたら、ミットの中の左手が持ちゃしない。

 スライダーにツーシーム……強い系の「変化球」はどれも140キロ近い高速変化。

 捕手の後ろからネット越しに見ていて恐怖を感じるボールを久しぶりに見た。

「(ドラフト)1位でしょう……」

 私がそう言っても、ま~た、また、また……と、監督さんも野球部長も、誰も本気にしない。

【次ページ】 「高校野球の卒業式」まで

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