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「今のメンバーでは走らせられない」今季の盗塁数12球団最少…カープ伝統の機動力野球が影を潜める理由とは?《誠也移籍の影響も》 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2022/06/06 06:01

「今のメンバーでは走らせられない」今季の盗塁数12球団最少…カープ伝統の機動力野球が影を潜める理由とは?《誠也移籍の影響も》<Number Web> photograph by KYODO

昨シーズンはチームトップタイの9盗塁を記録した鈴木誠也。カブス移籍の影響はHRだけにとどまらない

「今のメンバーでは走らせられない。(走力のランク的に)SとかAというより、BやCが多い。失敗の確率が高い中で、わざわざリスクを冒す必要はない」

 主力選手のコンディションを考慮しつつ、非情とすら感じるほど選手の能力や状態にシビアな一線を引く。

 開幕直後は8番に固定された上本崇司が中軸を返し、自ら出塁して上位につなぐ役割を果たしたことで攻撃に幅が生まれていた。だが、上本が調子を落としてスタメンから外れ、選手個々の調子の浮き沈みもあって打線全体が機能しているとは言い難い状況に陥った。特に交流戦では得点力低下が顕著だ。

「今の打線の中で動かすなら上位2人。その後ろは3番の西川(龍馬)はチーム内でも打撃力があり、そこでは動かしづらい。クリーンアップの後ろを打つ6番小園(海斗)のところで小技をと思っても、今は下位が固定できていない」

 東出コーチと作戦を練る迎祐一郎打撃コーチは現状、野間峻祥が1番に復帰してから6番までを中心に得点に結びつける形を現状の最善策とみている。

待たれる若手の成長

 機動力野球とはつまり、多少のリスクを覚悟しながら仕掛けることで相手を揺さぶるメリットを得ることだが、現実にはチームは大胆な現実路線に舵を切っている。

 現状が最終形というわけではないようだ。東出野手総合コーチは機動力強化の鍵を握る選手の名前を挙げ、若手に奮起を促す。

「宇草(孔基)とか(中村)奨成とかがスタメンを奪えば、自然と盗塁の数も増えていくはず。そういった選手たちがまだ決まっていない打順、ポジションに入ってこられるかどうか」

 伝統や理想に背を向けてまで現実路線に舵を切り、目の前の1勝にこだわっている。交流戦で苦戦するも、リーグでは3位につける。歴代最少盗塁に終わった85年ヤクルトは最下位となったものの、93年中日は2位。94年巨人はリーグ優勝している。中日や巨人のように盗塁数の影響を受けずに順位を上げていくのか、それとも再び機動力野球を取り戻すのか。茨の交流戦を経て進む道はどちらになるのだろうか。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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