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18歳、遠藤保仁デビュー戦の真実。
中村俊輔の共感、岡山一成の嫉妬。
 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/09/02 19:30

18歳、遠藤保仁デビュー戦の真実。中村俊輔の共感、岡山一成の嫉妬。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

遠藤保仁のJリーグデビュー戦は、横浜国際総合競技場で初めて行われた「横浜ダービー」だった。

18歳の頃からバタつかないヤット。

 この発言からも、開幕スタメンデビューだからと言って肩の力が入っていなかったことは伝わってくる。ならば周りはどう見ていたのか。3-4-3のウイングで起用されていた波戸は、右MFに入るルーキーとの連係を一切、心配していなかったという。

「レシャックさんは攻撃のリズムというものを凄く大切にしていた人で、パスサッカーを志向するにあたってヤットの能力は最初から高く買っていたと思います。20年以上前のことなので細かく覚えているわけではないけど、ヤットが後ろでキープしてくれるから、僕はとにかくやりやすかったなっていう記憶がありますね。みんなとのつなぎ役というものをやっていました」

 この試合、フリューゲルスの永井秀樹が前半に先制ゴールを挙げ、後半開始早々、サリナスに同点ゴールを決められた。1-1で延長戦に突入し、波戸と交代して入った佐藤一樹が三浦淳宏(現・淳寛)からのクロスに合わせて延長Vゴールを決めている。

 今季から京都サンガのコーチを務める佐藤に、この試合について尋ねたことがあった。昔の取材ノートを引っ張り出してみると、遠藤についての言及もあった。

「レシャック監督になって間もないし、戦術的にも完成していない状態。マリノスには井原さんはじめビッグネームがそろっていて、対するフリューゲルスは18歳のルーキーを2人先発させているわけですから、大崩れもあるんじゃないかっていう怖さもありました。でも蓋を開けたら互角に戦えたし、ヤットは肝っ玉が据わっていましたね。技術がしっかりしているし、バタつくこともなかった。まあ、ヤットがバタつくことなんて結局見たことないですけど(笑)」

裏表がなく、壁をつくらない。

 デビューなのに、もう何年間もここでプレーしているような落ち着き。なぜ、それができるのか。頭に浮かんだ疑問を波戸にぶつけると、彼はハハハと笑って言葉を続けた。

「ヤットって、ピッチ内でもピッチ外でも壁をつくらないんですよ。裏表がないし、何があってもマイペース。それって今思うと、凄いことだと思うんですよ。僕のほうが3つ上。ヤットもチームの寮に住んでいたんで、よくトランプ遊びをやってましたね。アイツ、メチャクチャ強いんですよ!」

【次ページ】 松田も俊輔も、みんなが褒める。

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