プロ野球亭日乗BACK NUMBER
中田翔の同点弾に“4番像”を考える。
広島と日本ハム打線の最大の違い。
posted2016/10/27 12:15
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
ようやく4番のバットが火を噴いた。
日本ハムの中田翔だ。
日本シリーズ第4戦、1点を追う6回。先頭で打席に入ったその初球。広島先発の岡田明丈の甘く入ったスライダーを逃さずにフルスイングした。“打った瞬間”の打球が、一直線でレフトスタンド中段に突き刺さった。
「変化球狙って、投げミスが来ないかな? っと。ぴったりハマった。ラッキー!」
この一発が布石となり、8回には相手バッテリーが警戒する中で四球を選んで、ブランドン・レアードの決勝ツーランを引き出している。
4番が4番の働きをすればチームは強い。その証の勝利だった。
実は日本ハムと広島の大きな違いの1つが、この4番打者の意味だった。
広島は4番を固定しない、順応のチームである。
今季のレギュラーシーズンでも新井貴浩の67試合を中心にエクトル・ルナが59試合、松山竜平が15試合、ブラッド・エルドレッドが2試合、合わせて4人の打者が4番を任されている。このシリーズはケガでルナを欠いているため1、2戦が松山、3、4戦が新井と2人の併用で戦ってきた。
4番で対応力を作る広島、不動の日本ハム。
おそらく緒方孝市監督も、4番を固定できるに越したことはないはずである。ただ、そういう絶対的なスラッガーがいないことで、広島はチームの顔を変えることができる。相手投手のタイプや本人の調子にチームを順応させて、4番を使い分けてきたのである。1番から3番までが不動で、むしろ4番を変化させることで、悪い流れを断ち切ったり、チームのムードを変えることができるという利点もあるわけだ。
一方の日本ハムの4番は不動だ。
レギュラーシーズンでは腰の張りで6月28、29日の西武戦を欠場しただけで、残りの141試合は全て4番で先発出場を果たしてきた。このシリーズでも全試合で4番を任されている。
広島のように調子が悪いとみれば代役を立てられる柔軟性はない。不動であるがゆえに、中田の調子が上がらなければ、日本ハムの打線はなかなか得点力が上がらなくなる。中田が死ねば、チームも死ぬ。そういうリスクと責任を背負っているのが日本ハムなのである。