「全然目立たない選手」だった丹羽。

　福岡に加入後から、「J2でのプレーを余儀なくされた」という態度は一切見せなかった。周囲の選手は丹羽がはっきりと代表入りといったビジョンを口にする姿を見たことがなかったという。

　ポジティブで明るい一面をアピールしながらも、ただただひたすらに、目の前のことに取り組む日々を続けた。

　大阪の堺市出身で、中学校時代も共にプレーしたGK神山竜一（'08－'11年に福岡で丹羽とプレー）は、過去の丹羽を「全然目立たない選手」と見ていた。同時に「昔からの姿と同じだな」と感じることがあった。

「努力をする姿勢、意識の高さは昔から同じで。毎日早く練習に来て、必ず入念にストレッチをする。夜は交代浴したりとか。食べ物、飲み物にもふだんからとにかく気をつけていた」

　丹羽は'08年シーズン途中の加入時こそ、デビュー戦でゴールを決めるなど活躍を見せたが、翌'09年のシーズン初頭にはポジションを失ったことがあった。J2ですら試合に出られない状況にも、「腐らず、同じように練習前のストレッチなどケアを続け、周りにも気を遣う態度をとっていた」（神山）という。

　その自己管理の徹底ぶりは、チームメイトも驚くレベルだった。

　'08年、丹羽の福岡加入時からともにプレーしたMF鈴木惇はいう。

「体にいいと聞いたものは、なんでも採り入れていましたね。もうオタクですよ。サプリに水にプロテインに筋トレ……もうついていけないほどでした！　一度、家に呼んでもらって、奥さんの料理を振舞ってもらったことがあったんですが……キッチンに高価なペットボトルの水がズラッと並んでいてびっくりしましたよ」

「いろんなチームを渡り歩いたから、代表に選ばれた」

　そうやって、当時を知る選手たちに丹羽のJ2時代の話を聞きだしていくうちに、「Jリーグでのレンタル移籍ヒストリー」について考えさせられる証言があった。

　MF末吉がこんな話をしていた。

「いろんなチームを渡り歩いたからこそ、代表メンバーに選ばれるまでになったんだと思います。（丹羽）大輝さんは複数のチームを経験することで、コミュニケーション能力を高めていったはずです。僕がチームに加入してきた時も、本当にざっくばらんに話しかけてきてくれた。先輩後輩関係なく、誰とでもコミュニケーションを取れる能力がある。きっと代表チームで生き延びていくなかでも、その能力は役立つと思うんですよね」

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