サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「自分も選手も徹底管理」がハリル式。
部屋行き来禁止、長机、毎日出勤。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/06/11 10:40
自ら「完璧主義者」であることを認めるヴァイッド・ハリルホジッチ監督。それでも選手やスタッフに愛されるのは、自らをも厳しく律していることが伝わるからだろう。
岡崎と長友の練習に、スタッフ15人で対応!
合宿初日のこと。インターバル走で遅れた選手がいると、コーチ任せにするのではなく、自ら駆け寄ってペースを落とすよう伝えていた。以前の合宿でも、軽い打撲であろうが、選手の異変を感じれば自ら状態を確認して休ませている。管理の一環と言われればそれまでなのだが、自分で確認する、選手とコミュニケーションを取る配慮を忘れない。
今回、欧州組は午前と午後の2部練習が基本。だが、コンディションを調整するために午後をオフにして、遅れて合流してきた岡崎慎司と長友佑都の2人だけで練習したことがあった。それでも選手2人に対して、15人ほどのコーチングスタッフ、チームスタッフで対応したのだ。
「アルジェリア代表のときも1人の選手に対して、全員がかかわってきた。当然のことだ」とスタッフに語っていたハリルホジッチの姿も、当然ながらそこにはあった。全員一緒というスタイルも、ハリル流の特徴である。
普段から毎日協会へ出勤し、合宿では一緒に走る。
アメはほとんどなく、ムチ、ムチ、ムチ。それでも選手たちは、納得してハリルホジッチについていく。
指揮官はスタッフにも、己にもムチをふるっている。
ランニングでは監督自ら選手と一緒に走り、周回遅れになってもやめようとしない(樋渡通訳まで走っていた)。そんな小さいことから始まり、日々代表監督の仕事において「全身全霊」で取り組んでいることは伝わってくる。
ある協会スタッフから「監督はほぼ毎日と言っていいぐらい、協会に来ていますよ。ゴールデンウイークで世間が休みのときでも、部屋で仕事をされていたようですから」と聞いたことがある。ハリルホジッチは就任の際、協会内に監督室を用意するよう要求し、その部屋は技術部内に設置されている。
聞いたところによれば、ホワイトボードには様々な情報がびっしりと書き込まれているという。部屋には大型のテレビが用意され、映像も確認できる。監督室の隣で仕事をするコーチングスタッフがまとめた試合のレポートやデータなど、多くの資料に目を通しているようだ。
筆者が知る限り、近年の日本サッカーで毎日、協会に“出勤”してくる監督など聞いたことがない。そして部屋で仕事をするばかりでなく、多くのスタッフ、サッカー関係者と直接コミュニケーションを取れるということも“出勤”の狙いのようである。