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“ダメ起用”の批判を覆した男、
山口鉄也が中継ぎ投手の未来を開く。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/06/27 10:30

“ダメ起用”の批判を覆した男、山口鉄也が中継ぎ投手の未来を開く。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2008年から昨季まで6年連続60試合登板のプロ野球記録を樹立したほか、通算202ホールドも歴代1位。今後、記録をどこまで伸ばせるか。

山口が積み上げた実績で、批判を封殺。

 だが、そんな批判を封殺したのは、まさに山口が積み上げてきた実績だった。

「監督さんからはいつも7、8、9回のいずれかで出番があるから準備しておくように言われています。だいたい7回には投げられるようにしているので、あとは特に問題はない。むしろ固定されるとプレッシャーがあるので、今の方がやりやすいですね」

 本人はこの「ジョーカー的」な使われ方にもまったく違和感がない、と話していた。

 10球ほど投げれば肩ができるというリリーフの適性もある。また「今でもマウンドに上がるとドキドキする」という、少しあがり症なところも、むしろ合っていたのかもしれない。いずれにしろ力のある左腕リリーバーの最も有効な起用法として、山口は球界に一つのパターンを作り上げたといってもいいだろう。

 今季は2月のキャンプ中に左肩を痛め、開幕直後にはインフルエンザに感染して体調を崩すなど、コンディション面での問題を抱えて、3、4月は9度の登板で3度の救援失敗などで防御率も10.29と不安定なピッチングが続いた。この山口の不振と機を一にして、チームも開幕から1カ月はエンジンがかからず苦しい展開が続いた。

 しかし復調した5月以降は、6月22日のソフトバンク戦で1失点するまで、17試合17イニング連続無失点を記録するなど本来の投球内容が戻ってきている。

 その結果として、巨人は2年ぶり2度目の交流戦優勝を果たした。左腕は優勝の立役者となったわけである。

200ホールドの第1号表彰者として。

 7月11日の阪神戦(東京ドーム)の試合前には、山口の200ホールドの連盟表彰が行なわれる。

 投手の表彰項目としては、これまでは勝ち星やセーブなどはあったが、中継ぎ投手に与えられるホールドは、全く規定がなかった。それが山口の記録達成が契機となって新たに表彰項目に加えられ、歴史として残ることになった。

 その第1号の表彰式となるわけだ。

 抑えでもなく、先発でもなく、あえて「ジョーカー」としてこの左腕を使い続けた原監督が陰の立役者なら、見事にその起用に応えて実績を残し続けてきた山口が主役として、球界に新しい歴史が刻まれることになる。

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