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<イエメン遠征の真実> 一夜かぎりの痛快大逆転劇。~“若すぎる日本代表”が見せた可能性~ 

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浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

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photograph byKiminori Sawada

posted2010/01/26 10:30

<イエメン遠征の真実> 一夜かぎりの痛快大逆転劇。~“若すぎる日本代表”が見せた可能性~<Number Web> photograph by Kiminori Sawada

指揮官が彼らのプレーに心を動かされた確かな証拠。

 確かに、彼らがピッチ上で見せたパフォーマンスを、これまでの日本代表の延長線上で評価すれば、分が悪いのは明らかだ。完成度には歴然とした差がある。

 しかしながら、明確な特徴を持つ選手たちが各々の武器をつなぎ合わせ、一丸となってイエメンゴールへと向かう様は、痛快そのものだった。粗削りな個性派集団が繰り出したサッカーは、“本家・日本代表”以上に魅力的に見えた、とさえ言ってもいい。

 この日キャプテンマークを巻いた槙野智章は試合後、ミックスゾーンに姿を現すと、開口一番言った。

「おもしろい試合だったでしょ」

 前半の出来を考えれば、半分は照れ隠しだったかもしれないが、「おもしろい試合」という見解に異論はない。

 槙野は選手を代表して試合前日の記者会見に登壇し、岡田の「意識不足」発言を隣で聞いている。それだけに何とか認めてもらいたい気持ちは強かったのかもしれない。

「0対2になったときから、日本の底力っていうか、魂、誇りっていうのを見せられたんじゃないかなと思います」

ポテンシャルの高さを証明してみせた若き選手たち。

 とりわけ自らの底力を存分に見せつけたのが、眠れる怪物、平山ということになる。

 山田の負傷によるスクランブル出場ではあったが、ピッチに入った瞬間からエンジン全開で、三度ゴールネットを揺らした。加えて、守備での貢献度も高く、平山のチェイシングから、日本は何度となく高い位置でボールを奪うことに成功している。

 インパクトだけなら、1年前の岡崎慎司以上。同じイエメン戦で代表初ゴールを決め、その後の代表定着につなげた気鋭のFWを思うと、いやがうえにも期待は高まる。

 また、同じく途中交代で入った乾も、ジョーカーとしての資質を披露した。後半をワンサイドゲームにした最大の要因は、乾の投入だったと言ってもいい。

 キレのいいドリブルで、自らニアゾーンまで切れ込んでよし。早いタイミングで低く速いクロスを入れてよし。変幻自在のプレーで、いくつものチャンスを作り出してみせた。

 そのほかにも、高い危機察知能力と展開力で、中盤の底をひとりで支えた米本拓司。尋常ならぬ運動量でプレッシングの急先鋒となりつつ、決定的なスルーパスを何本も通した柏木。落ち着いたプレーでマルチロールぶりを発揮した菊地直哉など、少なくとも後半に限って言えば、それぞれが独自の“ウリ”を十二分に発揮した。この1試合で見切りをつけてしまうには、あまりにも惜しいほどに。

【次ページ】 「非常に可能性を感じるプレーをしてくれた」と岡田監督。

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