最後に名前を呼ばれて登壇した佐藤寿人は、最愛の妻、家族に続けて、自分が所属した4クラブすべてを挙げて(しかも正式名称で)、感謝の意を表した。昨年のJリーグ・アウォーズ、ベスト11発表での一コマである。
なかには苦々しい思い出しかないクラブもある。だが、それも含めて、自身の成長の糧として受け止めている。そんな彼の気持ちが伝わってくる、実にすばらしいスピーチだった。受賞が5回目にもなる日本代表の常連が、「ありがとうございます」さえ満足に言えなかったのとは、比べ物にならないくらいに。
真のプロたるもの、子供たちに夢を与える存在でなければならない。理想の姿として、しばしばそんなことが言われる。それは何もピッチ上だけに限らない。しっかりとした社会性を持ち、自分の言葉で気持ちを伝えることも、プロとしての立派な務めなのではないだろうか。となると、宮本恒靖の突出した人気も合点がいく。表彰が続く舞台上を眺めながら、そんなことを考えていると、そういえばと、ある選手のことが思い出された。
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photograph by Takao Yamada