選手にとって一番大切なことは何か、それを甲子園球場にいたファンもナインも知っていた。だから阪神・金本知憲が記録を達成すると沸き起こった拍手は止むことがなかった。
'99年7月21日から701試合連続フルイニング出場は、同じ阪神の三宅秀史の700試合を42年ぶりに更新する新記録。連続して試合に出場するだけでも大変なのにフルイニングというのは並大抵の記録ではない。
3日前に左手に死球を受け、バットを握れない状態だった。星野仙一前監督に「監督にとって一番ありがたいのは、試合に出続けてくれる選手なんだ」と言われたこともあった。だが、右手しか使えない自分がチームのためになるのか。岡田彰布監督に「勝つことを優先して下さい」と直訴した。岡田監督の答えは「4番で行ってくれ」。記録は達成したがチームは巨人に敗れた。試合後、金本は「ここ3試合は記録のためだけで出さしてもらっている自分がある。いつまでも甘えていられない」と敗戦の責任を背負っていた。
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photograph by Hideki Sugiyama