半世紀近く前のヘビー級王者フロイド・パターソンが71歳の生涯を閉じると、米国のメディアはこぞって力の入った追悼記事を掲載した。筆者同様、ケネディ大統領時代のスポーツ英雄に深い惜別の念を覚えたからに違いない。
自伝の題名が「ビクトリー・オーバー・マイセルフ」だったように、努力すれば報われるという、理想に溢れたケネディの時代を象徴するような王者だった。
「もしボクシングと出会わなかったら、今頃はとっくに死んでいるか、塀の中の暮らしをしていただろう」。生前にこう語っていたように、ニューヨーク・ブルックリンのタフな地帯でたびたび警察の厄介になる問題児として育った。矯正施設に入れられ、ボクシングと出会い、史上最年少(当時)の世界ヘビー級チャンピオン──まるでマイク・タイソンの前半生と瓜二つだが、二人はカス・ダマトという同じ師をもつ「兄弟弟子」だった。
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