記事を
ブックマークする
甲子園が泣いた日 〜2023年9月14日「栄光の架橋」が響き、横田慎太郎の「24」が宙に舞った〜《阪神タイガース特別ノンフィクション》
9月7日、阪神タイガースは甲子園球場での対広島戦に勝利し、セ・リーグ優勝を決めた。2-0とリードした9回表、クローザー岩崎優がマウンドに向かった。場内に流れたのは岩崎の登場曲ではなく、往時、「火の玉ストレート」によって絶対的抑えとして君臨した藤川球児(現監督)の登場曲「every little thing every precious thing」だった。
岩崎がこの曲を選んで指定したのには理由がある。
2013年秋、岩崎はタイガースにドラフト6位で指名され、入団する。スピード、コントロールとも「見栄えはしなかった」が、球持ちのいいフォームから低めに伸びのある球を投げる。3年間、先発陣の一角を担い、その後、リリーフへ転向する。この時期、タイガースに復帰してきた藤川と出会う。藤川はメジャー、四国アイランドリーグを経ての“出戻り”だった。
キャンプ地やブルペンで、繰り返し、準備、配球、勝負球……リリーフ投手の要諦を教えてくれたのが藤川だった。
3度は優勝したいと思ってプロ入りしましたが、22年間やって2度でした。3度目は後輩たちがやってくれるでしょう――。引退時の記者会見で、藤川が記者団に語った発言が耳に残っていた。恩返しの気持を込めて、岩崎は“藤川曲”を選択したのである。
この日からいえば2年前、2023年9月14日、甲子園でセ・リーグ優勝を決めた対巨人戦の9回表、岩崎は同じように自身以外の登場曲でマウンドに上がった。入団同期生で、この年の夏、28歳の若さで病死した横田慎太郎が好んだ曲、ゆずの「栄光の架橋」(作詞・作曲:北川悠仁)を指定し、登場曲として流してもらったのである。
プラン紹介
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
この連載の記事を読む
記事


