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「僕はイチローさんタイプ」堤麗斗&坂井優太になぜサウジアラビアからラブコールが届いたのか「一番のなかの一番になりたい」《新星Wインタビュー》

2025/09/28
左から坂井優太、堤麗斗
いまや世界のボクシングの中心地となりつつあるサウジアラビアから熱い視線を浴びる若者がいる。アマチュアで磨いた才能と輝かしい実績を引っさげて、プロでも飛躍を始めた2人が思い描く、最高の未来とは。(原題:[新星たちが語る未来]堤麗斗&坂井優太「サウジが惚れた才能」)

 あの日から驚きが絶えない。5月のニューヨークは心地よい気候だった。夕方過ぎにTシャツ姿でアップを終えると、マンハッタンの街中でそのまま旧型のイエローキャブに乗せられた。世界ユース優勝を含むアマ9冠の実績を持つ堤麗斗は、長く連なる車列を見ながら「歩いたほうが早そう」と思ったが、10分もすればタイムズスクエアの特設リングに到着した。米国で人気を誇る世界2階級制覇王者のテオフィモ・ロペスらがメインに登場するビッグイベントの会場である。そのアンダーカードで組まれたスーパーフェザー級6回戦のプロデビュー戦。車から降りると、すでに堤の入場曲が流れていた。

「送迎車に乗っていると思ったのですが、演出の一環だったんです。黄色の車がタクシーだったことも知らなくて(笑)。何も聞かされていなかったので、マウスピースもなかったし、ひとりで慌てましたね」

 別で移動していた陣営は渋滞に巻き込まれていたのだ。入場にぎりぎり間に合ったトレーナーに急いで試合用の衣装に着替えさせてもらい、バタバタしながら準備を整えた。初めての屋外リングで高層ビルに囲まれた異質の空間のなか、心を落ち着ける余裕もなかった。ゴングが鳴れば、プロ5戦目のタフなアメリカ人を攻め立てたが、期待されたKO劇はお預け。持ち前の鋭い踏み込みを思うように生かせず、左構えから繰り出す強烈なパンチにも力みが見えた。

「硬くなり、実力の半分も出せなかったです。30点、40点の出来。倒したい気持ちが強くて、距離が近すぎました。僕の悪いときのパターン。本来は中間距離より少し後ろくらいなので。ただ、日本とは全く違う雰囲気を味わい、慣れない会場で戦えたことは良い経験になったと思います」

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photograph by Hideki Sugiyama / Getty Images

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