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《大関の肖像》琴櫻が語る“横綱への思い”、やるべきこと、高校時代の「鼻血と鼻水と涙」…埼玉栄・山田道紀監督「横綱になると思いますよ」

静かな土俵に静かな火花が散っては、また散り、もういっちょ散った。分厚い肉が骨のきしみを覆い、衝突のたび、他のいかなる世界にもない音は響いた。
佐渡ヶ嶽部屋の稽古は進む。
元関脇琴ノ若である親方は、聞き取るのに集中を要する声量で、本当に大切な何事かを力士に授ける。
57歳。いまだ、いい男である。
親愛なる読者がページを開いてくださる本誌は「1123号」である。32年前の「324号」の表紙を当時の琴の若實哉はモノクロームの横顔で飾った。
スポーツにおける「いい男」の研究。
それがタイトルである。
歳月を経て、正方形の座の特大木製チェアにワイン樽のサイズの腰を沈め、射るような視線を斜め前方に送る。
その先に、また「いい男」がいた。堂々かつ悠々の風情でオーラを発散、くらいつく後進を寄せつけない。
琴櫻将傑。大相撲にあって現在はただひとり、大関の地位にある。ということは広く列島の願いは、ひとえに雄大な背中にのしかかる。
さあ最高位へ。横綱へ。
昨年11月の九州場所において優勝を遂げた。14勝1敗。父にして師、佐渡ヶ嶽親方は、報道陣の目を避けて駐車場へ向かい、自家用の白いアルファードの後部座席モニターの歓喜を網膜に焼き付けた。

すぐに相撲記者たちは「泣きましたか」なんて不躾な声をかけるわけだが、そんなこと、鎌谷家の秘密に決まっている。どのみち一瞬の親心はたちまち封じられ、師匠と弟子の暮らしに戻るのだ。
琴櫻「悔しくないと言えばウソになる」
大相撲は甘くない。
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