新たな大谷翔平伝説が開幕した。大げさな言い回しかもしれないが、二刀流で歴史を動かし、驚異的なパフォーマンスを現地で目の当たりにしてきた記者としては、そう感じざるを得なかった。
“あの時”と、状況があまりに酷似していたからだ。
2021年4月4日、当時エンゼルスの大谷は投打で同時出場するリアル二刀流として、初めてメジャーの公式戦に出場した。DH制を採用してきたア・リーグで、DHを解除して投手を打席に立たせるという大胆な戦略だった。
果たしてうまくいくのか――。
そんな球界の空気を、大谷は一発で払拭した。1回の第1打席で、当時ホワイトソックスに在籍していた右腕ディラン・シースの高め速球を捉え、右中間スタンドへ運んだ。打球音だけでも本塁打と分かる、打った瞬間の豪快弾。三塁コーチの手をたたく大谷からはいつも以上の気迫が感じられた。この衝撃的な一発から、'21年シーズンの歴史的な二刀流伝説が始まったと言っても過言ではない。
3年後の'24年10月5日、ポストシーズン初出場の大谷に、どんなパフォーマンスができるのだろうかと、期待と興味が入り交じるような周囲の視線が向けられていた。
パドレスとの地区シリーズ第1戦、2回2死一、二塁。先発投手はあのシースだった。156kmの高め速球を強振すると、強烈な打球が本拠地ドジャースタジアムの右翼スタンドへ飛んでいった。バットを両手で放り投げ、叫ぶ。高ぶる感情を抑えることなく、チームを鼓舞するように表現する。3年前と、打った球種もコースも同じだった。間違いなく、この本塁打もまた“伝説の幕開け”だった。
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