私が18歳で幕内に上がってから、旭天鵬関にはいきなり4連敗を喫しました。若造だった私からすると、「これが大相撲か。これが幕内なのか!」という強烈な印象を植え付けられたものです。
旭天鵬関は「昔ながらのお相撲さん」という風情のある方でした。色白で、足が長く、体も大きい。顔立ちもシュッとしていて、万事において格好よく、本当に人気がありました。今は審判部で一緒の班にいますが、とにかく若々しい。ご本人は「もう50歳だよ」と言いますが、発想も、話し方も、それにお酒の飲み方まで、まだまだ若いです(笑)。
「旭天鵬ワールド」に引き込まれ、上手を許し4連敗。
旭天鵬関の現役時代ですが、本場所で胸を合わせてみると、上手がとにかく強い。アマチュア相撲だと、中には下手の強さで勝てる人もいるのですが、プロの世界に入ると、上手は下手よりも強いという絶対的な事実があります。下手は生み出す力が小さく、相手を振り回すことは難しい。その点、上手は遠心力が働くので、より大きな力を発揮することができます。特に旭天鵬関が上手を引いた場合、どんな相手だろうと扇風機みたいにぶんぶん振り回してしまうのです。十代の私は、旭天鵬関の上手にただただ圧倒されたのでした。
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photograph by Takayuki Ino(Illustariton)