背番号「55」は、今でもニューヨークのファンの心に強く残っていた。2009年のワールドシリーズでMVPに輝いた松井秀喜が8月24日、ヤンキースタジアムで行われたイベント「オールドタイマーズデー」で始球式を行い、スタンドから大歓声を受けた。
日米両国で人気を集めた松井は、これまで幾度となく、恩師への思いを語ってきた。とりわけ巨人入団当時の長嶋茂雄監督に加え、ヤンキースでは名将ジョー・トーリ監督から大きな影響を受けた。
「あの2人との出会いがなければ、どんな野球人生を送っていたのかと思います」
18歳で入団した巨人でプロ野球選手としての基盤を築いた一方、トーリからは指導者に不可欠な視点と姿勢を学んだ。人格者としても知られるトーリは、卓越した洞察力に加え、周囲の声を「聞く力」が群を抜いていた。
「人間の本質とか、どういう人間なのかをしっかり見つめて徹底的に話す人。あのスター軍団をまとめ上げるためには、そこまでやらなくちゃいけないと感じました」
人間性や考え方を大事に。変わらぬ松井の姿勢。
ヤンキース入団直後の春季キャンプ中、松井は当時のベンチコーチ、ドン・ジマーを通して、トーリから「ヒット・エンド・ラン」のサインを出していいか、と問われた。松井は「もちろんです」と即答し、勝利最優先の思いを伝えた。日本の本塁打王として移籍してきた松井の姿勢に感銘を受けたトーリは、巨人時代から連続出場を続ける松井の名前を、毎試合、スコアカードに記入し続けた。
「普段のプレー、自分を見て感じてくれた。それがグラウンドでの信頼関係につながったのは本当に良かったと思います」
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