「自分でもまったく予想外だったんですが、涙が出てきました」
中村知春は、パリ五輪の代表選出を告げられたときのことをそう振り返った。1988年4月生まれ。代表12人のうち24歳以下が9人を占めるサクラセブンズ(女子7人制ラグビー日本代表)の最年長は、五輪選手団全体でも少ない「昭和生まれ」。だが、中村のパリへの道のりは、36歳という年齢以上に起伏に富んだ、ロング&ワインディングロードだった。
東京五輪落選で味わった「悔しさよりも虚しさ」。
ラグビーとの出会いは大学卒業時。'16年リオからの五輪種目採用決定で女子ラグビーの存在を知り、「前からコンタクトスポーツをやってみたかった」ことから始めた。大学まで打ち込んでいたバスケットボールではファウルばかりしていたというフィジカル女子に、ラグビーは絶好のスポーツだった。2011年10月、競技歴半年で日本代表に招集され、翌年には統率力を買われ主将を拝命。'12年から'20年までリオ五輪を含むほぼすべての国際大会で主将を務め、年間200日を超える過酷な合宿と遠征に心身を捧げ続けた―その中村が、'21年東京五輪の直前に代表から落選した。
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photograph by Nobuhiko Otomo