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「辰𠮷さんの時代に戦ってみたかった」2018年に井上尚弥が漏らした“羨望”と自らの“全盛期”<独占インタビュー>
横浜から海老名を結ぶ相鉄線の某駅前。赤ん坊を抱いた主婦が黒いダウンジャケットに身を包んだ若者の顔をのぞきこむ。
「井上さんですよね?」
笑顔でうなずいた若者は、赤ん坊の顔がカメラのレンズに向いていることを確認し、主婦と写真に納まった。年はあけて1月6日、オフのチャンピオンは気持ちいいくらいにリラックスしていた。
「年末の試合は好きなんですよ。試合が終わって、ゆったりと正月が迎えられるじゃないですか。あの感じが大好きなんです。もし年末に試合がなければ、ボクサーは年末年始でもずっと練習ですから」
1週間前、オンの井上尚弥は厳しい表情を浮かべ、横浜文化体育館のリングに立っていた。ヨアン・ボワイヨ(フランス)を挑戦者に招いたWBO世界スーパーフライ級王座の7度目の防衛戦。結果は王者の貫禄を見せつけた3回TKO勝ちだった。
10月に長男が誕生し、家族3人で迎える初めての正月。けがもなく、顔に傷ひとつできなかったのだから、言葉通りゆったりと新年を過ごせたであろう。それでもなお、その心が一点の曇りもなく晴れ渡っていたかといえば、そうではなかったと言わざるを得ない。
「今回は挑戦者選びがいつにもまして難しかったそうです。こればかりは、しょうがないと言えばしょうがないんですけど……」
強すぎるために対戦を避けられマッチメークが難航する。
井上は9月のアメリカ進出第1戦に快勝したあと、ジムの会長であり、プロモーターの大橋秀行にIBF王者、フィリピンのジェルウィン・アンカハスとの対戦を直訴していた。スーパーフライ級では減量が限界に近付いていた。そこで他団体王者との統一戦をいわば花道とし、バンタム級にクラスを上げようと考えたのだ。
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