ジャッカルという言葉を広めた前回ベスト8の立役者は代表の新キャプテンに任命された。体を張り続けることで味方に勇気を与える男がフランスの地でも大きな輝きを放つはずだ。
ありったけの表現をキーボードで打つ。
シャンパンのマグナム級ボトルのごとき上腕。砕氷船のラン。大河の流れのような加速。鉱石の耳たぶ。言葉の倉庫を漁るスポーツライターのささやかな楽しみは、されど結局のところ時間の浪費である。
姫野和樹は姫野和樹なのだ。
ジャパンの長い歴史における最新のキャプテンはたくましく、もちろん強く、万事に規格が大きくて、聴覚器官をつるつるの石にさせるファイトから絶対に逃げない。
29歳。ポジションは「ヒメノ」。フランカーでも、ナンバー8でも、控えベンチで起死回生や逃げ切りの重責を託されようとも、雄大な骨格のラグビー選手は他の誰とも似ていない。
地上の球をむしり取る(日本固有種のライオンによるジャッカル)や、観客席のいちばん上にいても、ただちに「うわっ、ヒメノ」とわかる。
新主将会見で目標を問われて「優勝」。
8月15日。ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)はようやくニッポン丸の船長の名を明らかにした。
さっそく主将は会見に臨んだ。
目標は?
「優勝です」
儀礼でなく素直な発言に聞こえた。頂点に立つ意気込みというよりも自分は絶対に前向きであるという決意。
それでよし。
同18日。こんどは囲みの取材に応じた。そこでこう明かした。
「自分という人間は責任を感じやすい。思い詰めたり、考えたりして、チームを助けたい、自分の仕事以上のことをやりたいと思ってしまう」
文脈としては。
「まず自分の仕事にフォーカスする。それが非常に大事。100%、全力をそこに注ぎ込む」
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photograph by Itaru Chiba