NBAでチームが大きく変わるきっかけは2つある。ひとつはオーナーが代わったとき。特に、バスケ好きが長年の夢だったNBAチームを買収したときは、思い切った改革や補強を進める傾向がある。もうひとつは、スーパースターが加入したとき。1チームあたりの本契約選手が15人と少ないだけに、スーパースターの影響力は大きい。
7月に渡邊雄太が契約したフェニックス・サンズは、今年に入って、その両方が起きたチームだ。渡邊も、契約前に「『また一から新しくカルチャーを作っていく』と言われた」と語っている。もはや、田臥勇太がいた頃のサンズではないのだ。
新オーナーのマット・イシュビアは、並のバスケ好きではない。大学時代は強豪ミシガンステイト大に、奨学金なしのウォークオン選手として所属。試合に出る機会は限られていたが、全米優勝も果たしている。その後、父が作った住宅ローン会社を大きくして億万長者となった。
そのイシュビアが、2月にサンズを買収した直後に手がけたのが、MVP受賞経験もある本物のスーパースター、ケビン・デュラントの獲得だ。しかも、大胆な補強はそれだけで終わらなかった。6月にはオールスター選手のブラッドリー・ビールを獲得。元からいたデビン・ブッカーとディアンドレ・エイトンを合わせて、『マックス・プレイヤー』(労使協定で定められた最高額のサラリーを得る選手)を4人も抱えることとなったのだ。
折しも、新労使協定でチームのサラリー制限が厳しくなったタイミング。サラリー削減の動きを見せるチームも多いなか、イシュビアは大型補強を優先させた。トップ4選手の今季のサラリーだけで1億6000万ドルを超えるサンズは、今後の補強に様々な制限がかけられることになるのだが、イシュビアは「今、勝ちたい。後のことは後から考える」と、躊躇はない。
人と同じこと、平均的なことをやっていては成功できないというのが、イシュビアの哲学だ。
「私たちはすべてのことで勝つつもりだ。平均的では何も成し遂げられない。私らしくもない」
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