昨年の全豪オープン1回戦で敗退した西岡は、あと2年で結果が出なければ引退すると宣言していた。それがシーズンエンドは当時自己最高の36位。今季は四大大会で連続16強。常識にとらわれない男の躍進の鍵を探った。
巧みな戦術で相手を異空間に誘い込み、力を封じる。執拗な攻撃としつこい守備で、相手をうんざりさせる。西岡良仁が試合で当たりたくない選手の筆頭格であるという見方は、男子ツアーの、特に上位選手の共通認識だろう。西岡は、準優勝した昨年の米国ワシントン大会でのフランシス・ティアフォーとのやりとりを明かした。
「僕が(ダニエル・)エバンズや(カレン・)ハチャノフと試合をして、終わってティアフォーに会うと『マジで、この炎天下でお前と試合するのだけは絶対、嫌だ』と。もちろん褒め言葉ですけど」
どこに打っても返ってくる。だから1ポイントが長く、必然、試合も長くなる。足が速く、守備範囲が広いというだけで相手に嫌がられるには十分だが、西岡はボールへの執着という点で他の追随を許さない。
「振り返ると、限界を超えていけたっていうのが本当に大きい。きついとか走れないとか、そういう限界だって思うところから僕は頑張れる。大抵の選手は頑張れないわけで、このちょっとの差で僕は勝ち続けている。人間って、頭の中に何となくのリミットがある。でも、勝ちたいという欲求の中で、僕はリミットを超えていける。捕れそうにないけど、走ったらもしかしたら捕れるから走るとか、普通の選手はやらないこともできる。僕とやりたくないっていうのは、それが大きいと思います」
体格的に不利な選手には「何かのスペシャル」が不可欠という西岡。錦織圭なら「タイミングの早さ、攻めの早さ」だが、自分自身では「限界を超えられるメンタリティ」がそれに相当すると自認する。
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photograph by Kiichi Matsumoto