今年、日本のプロレス界を最も騒がせている男と言えば、プロレスリング・ノア(以下、NOAH)の若きエース清宮海斗だ。
清宮は新年早々から騒動を巻き起こしている。新日本プロレスの1・21横浜アリーナ大会に出場し、新日本のエース、オカダ・カズチカとタッグマッチで対戦。1年前のタッグ初対決で格下扱いされ敗れた雪辱を期してこの一戦に臨みながら、オカダに終始「眼中にない」という態度を取られると、「力ずくで振り向かせてやる」とばかりにカットプレーの中で容赦なく顔面を蹴り上げた。
額を大きく腫れ上がらせたオカダがこれに激怒し殴りかかると、清宮も応戦し大乱闘に発展。試合は収拾が付かなくなり、近年では珍しいノーコンテスト(無効試合)裁定。客席からは怒号が飛び交い、明るい令和の新日マットが、この時ばかりは情念渦巻く昭和のプロレスを思わせる空気に包まれたのだ。
試合後、清宮は「シングルで決着つけろ! ビビってんのか!?」とオカダに一騎打ちを要求。以降、SNSには、新日ファンからと思われる誹謗中傷まがいのコメントが多数届くこととなるが、裏を返せば清宮の行動がそれだけファンを本気にさせたということだろう。
そして執拗な対戦アピールの末、2・21東京ドームの武藤敬司引退興行で、オカダ・カズチカvs.清宮海斗という新日本vs.NOAH頂上対決が実現した。因縁の闘いはオカダのフォール勝ちに終わり、清宮は現時点での実力差を見せつけられる結果となったが、武藤引退のドーム大会という多くの人が注目する舞台でオカダに善戦した清宮の認知度は大きく上がった。
端整なマスクに均整の取れた鍛え上げられた肉体。正統派を絵に描いたようなスタイルでありながら、どこかぶっ飛んだところがあり、危うさを含んだ清宮の不思議な魅力が、オカダとの一連の抗争によりNOAHファン以外にも広がり始めたのだ。
そして新日本の真夏の最強決定戦「G1クライマックス」に清宮の初参戦が発表されると、ファンから大反響が巻き起こる。他団体所属の日本人選手のG1エントリーは、'16年にNOAHの丸藤正道と中嶋勝彦が出場して以来じつに7年ぶり。年始に罵声を浴びた男が、新日本年間最大シリーズの“目玉”になったのだ。
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