2022年10月1日、不世出の天才プロレスラー、アントニオ猪木がこの世を去った。彼の死とともに私の少年時代も終わった。
猪木は私にとって“先生”だった。先生の言うことなら何でも聞いた。納豆も食べた。懸垂もした。校庭も走った。「一番になれ」と言われて児童会長選挙に立候補したし(落選)、「人と違うことをやれ」と言われて、ちびっ子相撲も始めた(満身創痍)。私の少数偏重志向は猪木に植え付けられたに違いなく、アントニオ猪木は人生の担任教師だった。
そんな猪木にも目の上のたんこぶがいた。ジャイアント馬場である。その壁は山のように高く、岩のように厚かった。猪木は馬場に勝つことを目標に刻苦精励を重ね、時に挑発を繰り返し、時に副業にうつつを抜かしながら、馬場に挑みかかった。'70年代後半から戦いを優勢に進めながら、それでも息の根を止めることは出来なかった。馬場にも大勢の“教え子”がいたのだ。
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photograph by Sports Graphic Number