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「自分は『関西若手四天王』と期待されていた」藤井聡太を追い詰めた村田顕弘が、ポツリと漏らした言葉

2023/07/15

 八冠の夢がかすんでいた。

 将棋界の全タイトル制覇に向かって驀進する藤井聡太の前に、村田顕弘六段(36)が立ちはだかったのだ。6月20日、関西将棋会館。藤井竜王・名人は王座戦挑決T準々決勝に臨んでいた。現在、七冠の藤井に残されたタイトルは王座のみ。挑戦権獲得まであと3勝に迫っていた。

 対する村田は2007年にプロ入りした中堅棋士。下馬評は断然、藤井有利だった。それでも村田は強い意気込みで本局に臨んでいた。それは勝敗とは別のところにあった。

「将棋は人間同士が指すゲーム。序盤からAI通りに指さなくてもいい。自分の感覚でいいと、藤井さんを相手に証明したかった」

 現在の将棋界はAI(人工知能)を使った研究が全盛で、定跡形の序盤は多くの変化を暗記できるかどうかの勝負になっている側面はある。

 だが村田は人マネを好まず、自分の感覚を大事にする。「棋士として個性を出せないのはさみしい。といって今はAIに逆らうだけでもダメ」。その村田が近年、編み出した新戦法が「村田システム」である。

「角道を開けずに銀の活用を急いで、押さえ込みを狙う戦法です」

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photograph by KYODO

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