「栄光の1985年」を率いた吉田義男は、“同志”として今も岡田の背中を見守っている。7月で齢90になる名伯楽が捧ぐ、共に頂点を掴んだ現・指揮官への激励――。
1985年のリーグ優勝、日本一をともに成し遂げた岡田彰布が今季から再び監督として戦っています。彼は教え子というより、野球の苦楽をともにした同志という感覚が強いですな。
1期目のころの岡田監督は、思ったことをそのまま口にするところがありました。それが最近は一度、自分のなかで飲み込んでから発言していて、周りによく配慮しているように映ります。今年のチームは若いけれど、いい選手も多い。積極的に補強するよりも、現有戦力をどうまとめて勝つかというチーム作りをしています。
その象徴ともいえる試合がありました。4月13日の巨人戦、セットアッパーの石井大智が相手の4番・岡本和真をセンターフライに抑えた場面ですね。
前夜、石井は完全試合ペースだった村上頌樹からの継投で8回に登板し、先頭の岡本に同点ホームランを打たれていました。石井は村上の勝利を消してしまい、申し訳ない気持ちもあったはずです。連日登板させた岡田監督の采配を見て、私が指揮を執っていた'85年の中継ぎ左腕、福間納を思い出しました。
福間は5月の巨人戦で、原辰徳にサヨナラホームランを打たれました。翌日、1点リードの7回、ピンチで再び福間が原を迎えても、私はあえて交代させませんでした。強いチームを作るには、失敗した選手をあえて同じ場面で使い、名誉挽回のチャンスを与えることが大事です。そうやって、戦力を作っていくものです。
私と岡田が監督と選手の関係だった当時から、彼はチームを率いる素質を見せていましたわ。'85年の監督就任早々、主力の岡田は私にこう言ったものです。
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photograph by SANKEI SHIMBUN