悲願のGPシリーズ優勝、そしてファイナル制覇。「壁を破れた」と確かな手応えを感じた今季だが、世界選手権では“新たな試練”も待ち構えていた。激動のシーズンで、彼女は何を感じたのか――。
6年ぶりの舞台だった。
2017年、フィンランド・ヘルシンキでの大会に出場して以来、2度目となった世界選手権を終えて、三原舞依は言う。
「けっこう落ち込んじゃっているのですが……」
ショートプログラムでは好演技を見せて3位につけたものの、フリーは後半のジャンプでミスが出た。結果、5位。
指導する中野園子コーチは、三原が「(大会前から)足を痛めていた」と明かしている。でも本人はそれを理由としない。
「私からは言わないでおこうと思っています。みんないろいろなものを抱えていると思うので。どんな状況でも表に出さずに元気に滑れる、心配させないようなスケーターになっていきたいので」
'19-'20シーズンに1年間欠場を強いられたときも、理由としたのは「体調不良」のみ。詳細は一切語らなかった。言い訳をよしとしない姿勢は今も変わらない。
何よりも、今回は悔しさが勝った。それでもシーズン全体を見渡すと、別の思いもある。'22-'23シーズンは、大きな飛躍を遂げた1年であったことも実感している。
グランプリシリーズで最初の試合となったイギリス大会。同シリーズ10戦目の出場で初優勝を遂げると、続くフィンランド大会でも優勝。
そして進出を決めたグランプリファイナルでも「初出場初優勝」を果たしたのである。
「壁を破れて1つ上がれた」
三原はそう表現する。数々の優勝の中でも、特にその実感を与えたのがイギリス大会だった。三原はショートで1位に立ち、フリーは最終滑走で迎えた。
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photograph by Shino Seki