イチローは大谷翔平について、今年の3月、こんなふうに話していた。
「バッターをやればいいのに……すごいピッチャーはいくらでも出てきます。でも、あんなバッターはなかなか出てこない」
この言葉を大谷がどう感じたのか、興味があった。大谷クラスのピッチャーはメジャーにはいくらでもいると言われてしまったことへの悔しさと、大谷ほどのバッターはメジャーにもなかなかいないと言ってもらえたことへの嬉しさと、どっちが勝っていたのか―大谷にそのことを訊くと、彼は照れ臭そうに笑ってこう言った。
「こんなバッターいないって言われたことの方が、そりゃ、嬉しいですよ(笑)。でも、小さいときからずば抜けて成績を残してきたわけではないですし、最初からこの技術や身体があったわけではない。これから先、どれだけ伸びるかなということの方がすごく大事かなと思います」
バッターとして褒められたことを無邪気に喜んでみせたかと思えば、すぐさま、今の自分はもはやイチローが知っているピッチャーではないと尖ってみせる。実際、プロ3年目の大谷は、ピッチャーとして想像を超える右肩上がりの成長曲線を描いた。 今シーズン、松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大の3人が揃って高卒3年目でクリアした15勝をマーク、同時にこの3人でも高卒3年目までには獲れなかった防御率のタイトルにも手をかけた。大谷自身はその進化をどう考えているのだろうか。
「甲子園での阪神戦は、投げ心地がすごくよかった」
「でも、特に変わったことはないんですよ。継続して取り組んできたことが身について、全体的なレベルが底上げされたということなのか……確かに投げていて去年と違うなと思うことはありますけど、じゃあ、何が違うのかと訊かれると、自分でもこれというものが思い当たらない。2年目は伸びたなと思うし、3年目も同じくらい伸びてるとは思うんですけど、それを自分で感じられないというか、大きく違っているのに自分の中に変わった感じがないんです」
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