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[侍OBプロフェッショナル解説]準決勝vs.メキシコ 6-5 宮本慎也「展開の妙が生んだ ラストチャンス」

2023/03/31
準決勝は過去2度敗退の鬼門。4回表、先発佐々木が3ランで先制を許す。7回裏に吉田の3ランで同点とするも再び勝ち越しを許し1点を追う9回裏。無死一・二塁で不振の村上が逆転サヨナラ二塁打。劇的勝利で決勝へ

 準決勝は劇的な幕切れとなりました。1点を追う9回の攻撃で、先頭打者で初球を仕留め長打にできる大谷翔平のバッティングは流石の一言。他の選手とはレベルが違います。試合を決めた村上宗隆の一打も、何より本人にとって本当に良かった。ここまで不振が長引くと精神的なダメージからバットが出なくなるものですが、マイナス思考に陥らず、甘い球をしっかり捉えることができた。彼らしいメンタルの強さが、あの場面で出たと思います。

9回の先頭打者として二塁打を放った大谷は塁上で大きく手を振り上げチームを鼓舞した Yukihito Taguchi
9回の先頭打者として二塁打を放った大谷は塁上で大きく手を振り上げチームを鼓舞した Yukihito Taguchi

 1次ラウンドから続いていた不調の原因は、簡単に言うと「引っ張って強い打球を打ちたい」という意識が強すぎたこと。昨シーズン、55号本塁打が出た後に不振に陥り足踏みが続いた時期と同じ状態です。彼ならば逆方向のレフトにも入るのだから素直に打っていけばいいのに引っ張ってしまう。2回の空振り三振から3打席連続三振に倒れた時もそのような姿勢が見え、これはなかなか難しいなと思っていました。

 7回2死一、二塁で4番の吉田正尚を迎える場面では、ベンチで山川穂高がヘルメットを被り準備していた。栗山英樹監督はおそらく、次打者の村上に代打を送る予定だったのだと思います。ところが吉田が3ランを放ち同点に追いついたことで、あの場面で代打策をとる必要がなくなった。さらに8回には死球で出塁した一塁手の岡本和真に代走が送られ、山川も代打に立ったため村上は最後まで打席に立ち続けることになった。色々なことが重なり運命的に巡ってきた挽回のチャンス。あそこで打てずに負けていたらシーズンまで尾を引きそうな不調でしたが、勝ったことで肩の荷を下ろせたでしょう。村上は色々な意味で本当にいい経験ができたと思います。

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photograph by Yukihito Taguchi

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