どんなサッカー選手にも、キャリアにおいて転機というものがやってくる。
能力を引きだしてくれる監督との出会いや、良きチームメイトとのめぐり逢いがある。ポジション変更に、負傷だってサッカー人生を左右する。
久保建英にとっての2022年も、大いなる転機となる年だった。
過去3年間、久保はレアル・マドリーからのレンタルでチームを渡り歩いてきた。マジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェ。随所に活躍を見せたものの、レンタル移籍ならではの難しさも感じていた。今年7月、レアル・ソシエダへの完全移籍を決めた後、久保はこんな話をしている。
「ここから選手として本当に飛躍できるのか。最後のチャンスだと思っている」
決断から4カ月。チームは変わり、自身のプレーにも変化があった。進化を見せた新しい久保が、カタールの地でワールドカップに挑もうとしている。
はじまりは真夏のカディスだった。
スペイン本土最南端にある、海に浮かぶ街。老舗バル「マンテカ」にいたレアル・ソシエダのサポーターのひとりは、小エビのかきあげをつまみながら言った。
「タケはいいチームを選んだよ。うちは攻撃的なサッカーをするから、きっと合ってる。結果を出すまでには時間はかかるだろうが、皆応援してるよ」
酔いどれ男の見解は正しく、そして見誤っていた。久保はデビュー戦で早速結果を出したからだ。
注目されたのはゴールだけではなく、そのポジションにもあった。
入ったのは2トップの一角。過去3シーズンで久保は主に右サイドでプレーした。しかし3年前から久保の潜在能力を評価し、獲得を希望していたイマノル監督は久保をただの右サイドアタッカーとは見ていなかった。
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