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「人は愛だ。人を信じ、縁に…」ダイエー、ロッテ、オリックスを支えた男・瀬戸山隆三の野球界での苦悩と“中内功の言葉”《ナンバーノンフィクション》
灼熱のピッチを選手たちが駆け抜ける。Jリーグ・アビスパ福岡の本拠地、ベスト電器スタジアム。その最上段の観客席で、真剣な表情で試合を見つめる男がいた。
瀬戸山隆三、72歳。ダイエー(現ソフトバンク)、ロッテ、オリックスとプロ野球3球団の経営という重責を30年にわたり担った稀有な存在だ。その卓越した意思決定と交渉力によって、あの「世界の王」こと王貞治を福岡に呼んだ立役者でもある。
2025年――福岡のスポーツ界は新たな歴史を刻む節目の年を迎えた。ソフトバンク誕生20周年、アビスパは創設30周年。かつてこの街にプロ野球を根付かせた男は今、アビスパの顧問として、再びこの地のスポーツの未来に向き合っている。
瀬戸山には変わらぬ哲学がある。
「すべては人なんです。つながりを大事にすること。そこからしか始まりませんから」
穏やかな語り口に、修羅場を潜り抜けた者の重みが滲む。ポケットに忍ばせた年季の入ったガラケーにはかつての監督や選手たちの番号が残る。涙ながらに戦力外を告げた朝も、叱責を受けた深夜も、この端末を通して人と向き合ってきた。
なぜ彼はいつも、支える側に立ち続けてきたのか――。その答えは、38年前の記憶に遡ることで、ようやく輪郭を現す。
瀬戸山の運命を変えた一言「君、野球やってたよな?」
1987年11月、東京・浜松町。当時33歳だった瀬戸山は、ダイエー本社の社長室で一枚の資料と向き合っていた。タイトルは「プロ野球球団買収の調査」、球団買収プロジェクトの青写真が広がっていた。
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