宿敵ドネアに対し1Rでダウンを奪い、2回TKO勝利。3団体統一に加え、米リング誌でPFP1位に輝くという日本人初の偉業を成し遂げた。まだまだ進化し続ける不世出のボクサーが、自身にしか歩むことのできない未来の“チャンピオンロード”の具体像を明かす――。(初出:Number1053号 [スペシャルインタビュー]井上尚弥「次なる王道へ」)
コーナーポストのロープに駆け上がった井上尚弥が「どうだ!」と言わんばかりの表情で両拳を突き上げた。残酷という二文字が思い浮かぶほどの無慈悲なKO劇に1万7000人の観衆が沸きに沸いた。
2年7カ月前、同じさいたまスーパーアリーナで行われたノニト・ドネアとのWBSSトーナメント決勝は、井上がフルラウンドの激闘の末に判定勝ち。これを受けての再戦も前回同様“モンスター”井上の有利が伝えられていたとはいえ、ここまで戦慄を覚えるほどのパフォーマンスをだれが予想しただろうか。試合翌日、本人が単独インタビューに応じてくれた。
――注目の3団体統一戦、ドネア選手との再戦は圧勝という結果に終わりました。昨年12月のアラン・ディパエン戦では少し集中力がなかったと話していましたが?
「ディパエン戦ではリングに上がった瞬間、会場の様子が奥のほうまで見えるほど視界が広くてちょっとマズいなと思ったんですが、今回はまったく違いましたね。視界はギューッと狭かったですよ。集中力は高かったですね」
――開始早々、ドネアの左フックをもらって緊張感が高まったと試合直後に明かしましたが、そんなにヒットしているようには見えませんでした。
「そうなんです。映像で確認するとブロックしているように見えるし、パンチを受けた自分の体もブレてない。そんなにもらってるイメージじゃないんです。だけどガードの間からパンチが入って右目の下あたりにバシーンと当たった、もらったという感覚が自分にはありました」
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photograph by Maciej Kucia