前人未踏の快挙を達成しても、なお期待をしてしまう。プロ3年目で覚醒を遂げた逸材は、想像を超える成長と伸びしろをどう感じているのか。朗希フィーバーの最中、本人が描く未来予想図、理想のピッチングを聞いた。
完全試合という快挙を成し遂げた夜。
20歳の佐々木朗希は、テイクアウトで自室へ持ち帰った寿司を1人で食べていた。
「疲れたんで、魚を食べたかったんです。プロに入ってからは、疲れたときに魚を食べますね。ナマモノは疲れるんで本当は焼き魚系がよかったんですけど、時間も遅かったし、寿司も好きなんで……」
疲れを癒やすために寿司を頬張り、いつものようにその日の試合をビデオで見直す。いつしか佐々木は、画面の中の快挙に迫るピッチャーを客観的に見つめていた。
「後半になるにつれてカウントが悪くなったりすると、これ、大丈夫かな、ちゃんと抑えられるのかなって思いながら見ていました。ノースリーになったとき(7回、先頭の後藤駿太に対してストレートが3球続けて外れる)も、試合中は全然、気にならなかったのに、見ているほうの立場になるとイヤなものですね(笑)」
2022年4月10日、千葉。
バファローズを相手に28年ぶり、史上16人目の完全試合を成し遂げたのは、20歳になった“令和の怪物”だった。
この日、佐々木は立ち上がりから160km台のストレートを連発。初回に対峙した3番の吉田正尚をストレート、フォーク、フォークの3球勝負で三振に仕留めると、2回から5回までの12人、すべてを三振に斬って取る。13者連続奪三振はプロ野球新記録、1試合19奪三振はプロ野球タイ記録――佐々木が常々「試合を支配したい」と話していた通り、圧巻のピッチングだった。
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photograph by Asami Enomoto