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[サンタ・クララ現地ルポ]守田英正「大西洋の火山島と日本人」

2022/05/06
ポルトガル本土から西へ1500km。海の彼方に佇む辺鄙な島にあったのは、美味な魚介スープと過酷なサッカー環境。欧州らしからぬ欧州で戦う日本代表戦士のもとを訪ねた。

 ポルトガル語なまりの機長のアナウンスが流れ、小窓から外を眺めた。

 薄い雲の隙間を飛行機は飛んでいく。蒼い海と大地が見えた。島の上部は濃い緑で覆われていて、ところどころに集落が白い点となって続いている。

 島の上に虹がかかっていた。奥地では雨が降りはじめる頃だろう。

 アソーレス諸島は大西洋の真ん中に浮かんでいる。捕鯨やマグロ漁で栄えた島々はポルトガルの一部ではあるものの、本土からは1500km離れている。首都リスボンから飛行機で2時間半。大洋に隔てられ、欧州世界から断絶された島々には、いまも独特の風土が残っている。

 守田英正は同諸島最大のサンミゲル島で日々を過ごしている。

 島は復活祭を前に賑わいをみせていた。欧米からの観光客もいる。コロナの時代に溜め込んだ、人間の旅する欲求があたりに満ちていた。

 アソーレス諸島の人口は24万人、その半分以上がこの島に住んでいる。最大の町ポンタ・デルガダは白黒の石畳が続いていて、ゆったりとした時間が流れている。道ゆく人々も素朴で、着飾った人はいない。

 その午後には島のチーム、サンタ・クララの試合が控えていた。市街地から北東へ、10分ほど車で進んだところに、エスタディオ・デ・サンミゲルはある。

 牧歌的なスタジアムには地方の運動公園の趣が漂う。道路からは試合が丸見えで、すぐそこで牛の群れが牧草を食んでいる。

 もくもくとした湯気とともに、旨そうな匂いが漂ってきた。売店の前でサポーターが試合前の腹ごしらえをしている。

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photograph by Daisuke Nakashima

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