25歳で2度目の五輪を迎えた天才ジャンパーは、重圧を乗り越え、ノーマルヒルで金、ラージヒルでも銀メダルを見事に獲得した。全競技終了後、現地で見せた表情と、思わず吐露した本音とは――。
出場した計4試合、長丁場の闘いが終わった翌日のことだ。
朝からプレスセンターでのメダリスト会見などをこなしたあと、張家口にある選手村のインタビュールームに現れたその姿には、試合では一瞬たりとも感じさせることのなかった疲労の跡がうかがえた。
「やっとこのハイプレッシャーな期間が終わって、ほっとしているというのが今の正直な気持ちです。でも、試合が終わってみてハイプレッシャーがあったんだと感じているだけで、いつからプレッシャーがあったとかはあまり覚えていないです」
こちらが一瞬、疲労かと感じたのは、むしろ解放感であったのかもしれない。
「撮影のために」と持参し、今、手にしているのは金と銀の2つのメダル。朝の光で柔らかな輝きを放っている。それは4年かけての取り組みが成就した証だった。
ノルディックスキー・ジャンプの小林陵侑は、大会前から金メダル候補として期待を集めていた。その注目は、知らず知らずに本人の重圧ともなっていただろう。それを跳ね返し、ノーマルヒルでは日本ジャンプ24年ぶりの金メダル、ラージヒルでも銀メダルを獲得してみせた。
この北京ではジャンプ直後に示す感情がいつにも増して大きかったのも、プレッシャーの大きさを物語っていた。
最初の種目となったのは2月6日のノーマルヒル。1回目では着地とともに激しくガッツポーズ。2回目は着地するやいなや叫んで片手を突き上げると、得点が表示される前に兄の潤志郎と抱き合った。ジャンプの出来と、勝利を確信したからこそだったろう。会心のジャンプについて小林は短い言葉で振り返った。
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photograph by Naoya Sanuki/JMPA