#1046
巻頭特集

記事を
ブックマークする

[前人未到の挑戦を見て]羽生結弦へのメッセージ――ジェフリー・バトル「彼にとって、満足のいく挑戦をすることが何より大事だった」

不運に見舞われたSPからの逆転を懸けて、足首の故障を抱えながら4回転半の大技に挑んだ。五輪の舞台で見せた勇姿に捧げる、盟友たちのエール。

 長年にわたって、羽生結弦の振付を担当してきたジェフリー・バトル。北京オリンピックの羽生の演技を見終えて、彼は本誌の独占取材に応じた。最初のジャンプが氷上にあった穴のために失敗という、厳しい出だしになったSPについて、まずはこう感想を述べた。

「エッジが穴にはまってしまったのは、本当に残念でした。ジャンプに入るための体勢などは、完璧に見えたのですが。氷の問題は全てのスケーターの競技人生において起こり得る事故で、ぼくも何度か経験しています。普通は、あと少しこうしておけば、ああしておけば、と後悔の念で圧倒されるのですが、ユヅはそこで引きずることなく、気持ちを切り替えて残りをノーミスで滑り切った。これはなかなかできることではありません」

 自らの競技時代の体験と、振付師になった今の両方の視点からこう説明する。

「ミスが出てもすぐに切り替えてというのはコーチ、振付師としては常に生徒に指導すること。でも実際には競技者として、それは簡単なことではない。ここまで多くの経験を積んできた彼だからこそ、可能だったのだろうと思います」

 今シーズンのSPのサン=サーンス作曲『序奏とロンド・カプリチオーソ』は、バトルとシェイ=リーン・ボーンのコラボレーションとされている。これまではSPをバトル、フリーをシェイ=リーンが振り付けてきた。二人が一つのプログラムを振り付けるというのは、どのような作業だったのだろうか。

「昨シーズンの終わりから、次はピアノ曲で滑りたいとユヅから相談を受けていたので、ぼくの方でも色々と探していました。その後、彼の方で気に入った音楽としてこの『序奏とロンド・カプリチオーソ』を見つけ、元々バイオリンの曲だったのをファンタジー・オン・アイスで競演したピアニストに、彼のためにアレンジして演奏してもらったのです」

会員になると続きをお読みいただけます。
オリジナル動画も見放題、
会員サービスの詳細はこちら
特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Ryosuke Menju/JMPA

0

0

0

前記事 次記事