熾烈なチャンピオンシップ争いを繰り広げた両雄は、全22レースの最終戦最終ラップまで火花を散らし続けた。ホンダのラストイヤーに展開されたこの激闘を複雑に絡み合う2強のライバル関係から振り返る。
1974年以来、47年ぶりにチャンピオンシップを争う2人が同点で迎えた最終戦アブダビGP。レースはスタートで若きマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をかわしてトップに立った7冠王者のルイス・ハミルトン(メルセデス)が終始レースをリードし、勝敗は決したかと思われた。しかし、'21年シーズンの本当のフィナーレは、この後に待っていた。
レース終盤に導入されたセーフティーカーによって2台の差は一気に縮まり、さらにレースディレクターが両者の間にあった周回遅れのマシンを排除した後にレースを再開すると判断したことで、形勢は一気に逆転。残り1周で再スタートすると、直前にタイヤ交換を済ませていたフェルスタッペンが、そのグリップ力を生かしてハミルトンを抜き去ってフィニッシュ。劇的な勝利で初の王者に輝いた。
かつてF1の最高責任者を務めていたバーニー・エクレストンはこう言った。
「こんなにエキサイティングなシーズンは、長いレース人生でも経験したことがない」
ではなぜ、'21年シーズンは最後の1ラップまでこれほど盛り上がったのか。それは、チャンピオンシップ争いを繰り広げたレッドブルとメルセデスの間に、複数のライバル関係が存在し、それぞれが激しく火花を散らす全面戦争となったからに他ならない。
コース上で繰り広げられたフェルスタッペンとハミルトンの戦いがいかに激しかったかは、2人が'21年の1シーズンだけで3度も接触事故を起こしていることでもわかる。最も大きかったのが、第10戦のイギリスGPの事故だった。
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photograph by Mamoru Atsuta