#1043
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[掴み取った新境地]鍵山優真「早熟な挑戦者として」

シニアデビューの昨季は世界選手権で堂々の銀メダル。勢いに乗り迎えた五輪シーズンは、波乱の幕開けだった。負傷を経て感じた葛藤。しかし18歳の俊英が見せたのは、まるでベテランのような精神力と、奇跡の大逆転劇だった。

「昨季の全日本選手権や世界選手権の映像を見返したら、不安な表情がなくて、すごく楽しそうに滑っていました」

 今季のはじめ、鍵山優真はまるで懐かしい子供時代を振り返るかのように、そう口にした。シニアデビューとなった昨季は、トップ選手と戦うことを楽しんで世界選手権銀メダル。しかし今季は空気感が違った。北京五輪のメダル候補と目され、口では挑戦者と言いながらも、どこかで重圧を感じている自分がいる。18歳となるシーズンは、揺れる心で始まった。

 4月のオフを迎えると、鍵山はまず4回転ループとルッツに着手した。

「世界のトップ選手と試合して、やはり4回転の種類をもう1、2種類増やさないと勝てないのを目の前で実感しました」

 世界選手権2位の肩書きを忘れるためにも、新たな4回転に挑むことは気持ちの拠り所となった。4回転ループは1月に練習していたこともあり、練習を再開するとわずか2日で成功。4回転ルッツもすぐに手応えを掴んだ。父の正和コーチが「優真は、締め方を変えれば他の4回転も跳べる」と太鼓判を押していた通り、驚異的なスピードで習得していく。7月にはこう話した。

「4回転ルッツは少しずつ降りられるようになってきています。今季はまずルッツを試合で入れると思います。4回転ループもだいぶ良い形になってきています」

 だが8月に状況は一転。4回転ルッツの練習中に転倒し右手首を骨挫傷してしまう。

「骨挫傷でしばらくギプスをつける生活になり、ジャンプの練習が出来ませんでした。4回転ルッツは怖さが残るので、まずは4回転ループを安定させたいです」

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photograph by Nobuaki Tanaka

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