生え抜きの若虎たちが躍動する新生タイガース。育成成功への転機は'15年秋にあった。
さすがに覚悟せざるを得なかった。
まだ肌寒さが残る甲子園。ドラフト5位ルーキーだった青柳晃洋は登板直後の5回表、マウンド上で緊張から顔を引きつらせていた。1球目からボール球が10個続き、球場全体からため息が漏れ続けていた。
「これは代えられちゃうな……」
統括スカウトを任されていた佐野仙好は今も、そう諦めかけた直後の光景を鮮明に記憶している。3者連続四球から2失点した新人に2イニング目が与えられたのだ。
落ち着きを取り戻した変則右腕は3者凡退を奪って、笑顔で降板。試合後に金本知憲監督から「結構、力あるよ。一軍も十二分にあり得る」と褒められたと耳にして、また驚いた。2016年3月5日、ロッテとのオープン戦にまつわる思い出だ。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by KYODO