究極は27球か、81球か――ピッチャーとしての価値観を推し量る上で、よく使われる問答である。対戦するすべてのバッターに初球を打たせて一試合を27球で終わらせたいか、全員を3球三振に仕留めて81球で終わらせたいか。そう桑田真澄に問い掛けたのは32年前、1988年の冬のことだった。当時、20歳の桑田はこう答えている。
「27球も81球もつまらない。理想のピッチングは130球ですね」
この言葉には驚かされた。ヒットを打たれても次のバッターにゴロを打たせてダブルプレーを取る。ここは歩かせたほうがいいと思えばフォアボールを出すことも厭わない。点差があれば1点を与えてもアウトカウントを増やすことを優先する。そうやって、いかに最少失点で切り抜けて勝ちを掴むか。そんなピッチングにこそ醍醐味があると、桑田は言ったのだ。とても20歳の発想とは思えない。打たせて取る27球やオール三振の81球とはひと味違う究極のピッチングを、桑田は130球という球数で表現したのである。
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photograph by KYODO