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<現役最終戦に秘めた思い(7)> 明神智和「最後だからこそ普段通りで」

2020/12/02
'19年J3最終節、明神は7月28日のG大阪U-23戦(後半42分に交代出場)以来となるピッチに立った
2002年日韓W杯で日本初の16強進出に貢献した“名脇役”が、昨季を最後に、静かにユニホームを脱いだ。契約延長のオファーがあったにもかかわらず――。

2019.12.8
J3リーグ 第34節
成績
長野 1-0 熊本(前半0-0 後半0-0)

   ◇

 師走にふさわしい冷え込みとなったその日、明神智和は本拠地、長野Uスタジアムに入ると、いつものようにドレッシングルームの扉を開けた。

 天井に蛍光灯が二列に並び、ラバー貼りのフロアは戦う心を掻き立てるような真紅に染められている。部屋の両側に並んだロッカー右側の一番奥、自分の“指定席”に着くと、そこに置いてあるものに気づいた。

 このチームのキャプテンマークであった。

《監督がそうしてくれたんです。うれしかったんですが、僕は普段キャプテンではないので……最後だからといって、特別な空気にはしたくなかったんです》

 日本プロサッカー3部リーグの長野パルセイロは、ロアッソ熊本とのシーズン最終戦を迎えていた。それは同時に、1週間前に引退を発表した明神にとってのラストゲームだった。

最後の試合だからこそこれまで通りでいたかった

 キャプテンマークを手に取った明神は、自分の気持ちを伝えるために、監督の横山雄次のもとへ向かった。

「いや、ダメだ。お前にやってもらいたい」

 横山からは逆に突き返されたが、何度か押し問答をした末に何とかマークを返上することができた。

《最後の試合だからこそ、これまで通り、目の前の試合に勝つためだけに取り組みたかった。勝つために求められる選手でありたかったんです》

 華麗なゴールシーンを数秒巻き戻すと、そこには相手からボールを奪う明神がいる。カタルシスの前後にある静かな職人仕事を黙々とやってきた。それゆえ、数多くのチームと監督から求められた。

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photograph by J.LEAGUE

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