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<現役最終戦に秘めた思い(4)> 岡崎朋美「娘がいたから笑顔でサヨナラ」

2020/10/21
岡崎朋美は、娘とともに挑んだ最後の闘いを笑顔で締めくくった
長野五輪で“朋美スマイル”を見せたヒロインは15年後、以前とは全く違うモチベーションで、五輪6大会連続出場に挑んだ。子供を一緒に連れて行きたい、と――。

2013.12.28
ソチ五輪代表選考会
スピードスケート女子500m
成績:総合6位 39秒55/39秒60

   ◇

 氷上のスタートラインに左足を合わせると、岡崎朋美は腰を落として構えた。

 ソチオリンピックをかけた選考会、スピードスケート女子500m。1本目で6位と出遅れた岡崎は、この2本目で巻き返す必要があった。

 長野エムウェーブに集まった観衆は、かつてこの会場でオリンピック銅メダルに輝いたヒロインの挑戦を見つめていた。太ももの筋肉が隆起している。彼女が相変わらずトップスプリンターであることの証明だ。

 ただ、月日が変えたこともある。岡崎は42歳になっていた。この選考会で3位に入れば、女性として日本史上初めて6度目の冬季オリンピック切符を手にすることになる。そして何より変わったのは、淡いピンクのウェアの左胸に自分以外の人間の名前を入れていたことだ。

《子供を一緒にオリンピックに連れて行きたいという気持ちで臨んだレースですから、一心同体という思いでした。一緒に滑る。力をもらうという感じです》

 岡崎はアスリートであると同時に、母だった。

子供を持ちたかった。私が道を開けたら…

 岡崎が、この世界でまだ誰も歩んだことのない道に挑もうと思ったのは、5度目のオリンピックとなった2010年、バンクーバー五輪の後だった。

《女に生まれたからには子供を持ちたかったですし、子育てとオリンピックレベルでの競技を両立させた人はいなかったので、私が道を開けたら、という気持ちでした》

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photograph by KYODO

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